一人の休日。準備編。
急にお嫁さんが実家に帰ることになった。
決して三行半ではない。念のため。
元々の実家をいつ売りに出してもいいように、片付けに行くんだそうだ。久しぶりに親姉妹が揃うと喜んでいる。僕については新幹線代がもったいないからと家で留守番を申し渡された。
急に一人にされても…、などとは微塵も思わない。なぜなら僕は生まれ持っての一人っ子。数十年を孤独に生きてきた。生まれてこの方一人寂しいなどと思ったことは一度もない。ただの一度もだ。正真正銘無頼漢。人肌恋しいの真反対、人肌憎し。一人こそ楽しい。一人こそ気が晴れる。一人でやることは全部黄金。一人道の体現者、それが僕だ。
人類皆兄弟、とか皆友達、などとあんな戯言は資本主義に染められた社会構造がお客さんや食い扶持を集めるために喧伝した紛い物の思想にしか思えない。人類は結局最後は一人だ。あえて言うなら孤独こそ真に友達であるべきなんだ。
もっと世の中は一人でも楽しめるように社会や福祉、公的機関を構成するべきだ。そして図らずしもこれからの世の中はそうなっていくと思われる。そう信じてる。
金曜日
今日の仕事終わりからお嫁さんは実家に帰る。
夜から週末にかけて2.5日間。一人の生活スタートだ。数年前に足を骨折、入院して以来の久しぶりの一人生活。その時と違うのは唯一僕は足腰が自由だということ。自由じゃないのは財布ぐらい。自由は素晴らしい。精神に何かがたぎってくる。オーラがみなぎってくる。溢れ出る何かを察してお嫁さんが退社間際に留守中の大胆な行動に釘を刺していった気がするが気にしない。なぜなら一人っ子の一人遊びを止められるのは一人っ子当人だけだから。
この限られた時間と財布の小遣いを有効に活用するためにいくつかプランを練ってみた。
できればやりたいこと、やらなくても良いこと。最後に絶対やっておかなくてはならないこと=家事。なぜならこれをやらないとお嫁さんに怒られるから。これらを記述して優先度を上から順に付けていく。
仕事中に何やってんだと思われるかもしれない。残念ながら今日の仕事はもう午前中に終わらせてしまった。普段ぼへ〜っとしか仕事していない僕がなぜか入社以来見せたこともない必死の様相で朝から八面六臂の大立ち回り、阿修羅の如くタスクをこなしていく様はきっと上司や同僚、果てはチームの人達全員の度肝を抜いたことだろう。
これこそ一人道の真骨頂、タスク前倒しってやつだ。
普段からそうしろよと言われてしまうと面目丸つぶれなのだけど、とりあえずそのおかげで午後からは突飛な仕事がくる以外は少し時間と精神に余裕ができた。一応念のため補足がてら、グーグル先生にも世の中の人達の休日の過ごし方を検索して調べてみることにする。べつに他の人のやることを気にしてるわけじゃないんだからね!
大人が一人で休日にやること第1位は男女共に買い物なんだそうだ。
なるほど。これは是非とも早い段階、できれば本日中に終わらせてしまいたい。
なぜなら休日に買い物に出てしまうと気が緩んで時間と小遣いの制限を忘れて全てを無駄にしてしまうことが良くあるからだ。なので帰りに買い物は終わらせてしまうことにする。後、やらなくてはならないことリストの最上位にお嫁さんに言い付けられた掃除洗濯が存在する。これもどうせなら今日やってしまいたい。せっかくの休日に掃除洗濯なんてかったるくてやってられない、こともないけどまぁ早く終わらしてしまった方が良いだろう。家事とは違う理由で太陽の光を感じたいと思うから。
定時終わりのチャイムが鳴ると同時に上司一派の夜の誘いに片手をあげると見せかけ華麗にかわし、僕は会社を後にした。そしてまず銀行に向かう。先立つものもなんとやら。今日は月末の金曜日。そして僕の働いている場所は悲しいかな浪費家の大砦、歌舞伎町だ。金曜日の銀行ATMが長蛇の列になるところは毎週のように見てきた。特に月末と給料日後はとにかく酷い。時間を無駄にできない。関係無いけど僕の同僚の一人は借金してまで飲みに行く。愚かな人だ。度を越えている。
案の定、僕の後ろは出遅れてしまった資本主義の戦士達がどんどん列を作ってしまっていた。
買い物
狙ったのはランニング用に使える上下のウェアだった、が残念ながら予想より高かった。最近のはファストファッションと言えど高い。目的の物以外見ないことにする。と、違う店でメッキのバングルを手に取ってしまった。安かった…。買ってしまった。また無駄な出費が…。
まぁいいか、もう帰ろう。一人休日の第1位、買い物は達成した。不本意にも。大きな都会は全部魔都だ。いるだけで財布と気持ちが緩む。お金を使う。一人でいる時の強敵は浪費だ。だれも止めてくれない。常に戒めないと。さよなら誘惑。
そういえばご飯を食べていない。ヘルシーかつ安くて時間がかからない食事は世の中に無いものだろうか。ゼリー状の栄養ドリンクなんかは良いですね。食べた気にはあまりならないけれど。
帰りの電車
買い物に時間を割いたせいで軽い飲み会帰りの戦士たちの帰宅時間にかかってしまった。酔っ払いの一人に絡まれる。普段なら話し相手くらいならしてあげても良いけど残念、今の僕はATフィールド全開なんだ。顔も狂気に満ちている。耳にはノイズキャンセリングイヤホン。後、実は何言われたかだいたい分かったけどガン無視してしまった。ごめんね、良い気分を邪魔して。僕の一人を邪魔しないで!
この時間に今日のプランを確認しておきたい。
家についたらまず洗濯物をしよう。その間に走りに行って掃除機をかけよう。お風呂に入って出てくるころには洗濯は終わっているだろう。
それを干しながら歯を磨き、程よく疲れたらすぐ寝よう。休日を最大にするために。
明日のプランはだいたいこうなる予定だ。
早朝に起きる。朝走る。お風呂に入る。午前中の宅配便を待ちながら家の片付けをする。
宅配便がきたらクリーニングを出し、図書館で勉強するかプールに行く。お昼を食べ夕方まで何かする。何かする〜、を何しよう。
夕方食料品の買い出しをし家に帰る。ご飯を食べる。もう一度走る。お風呂に入る。そして描けたら4コマを描いてみて早めに寝る。
こんな感じにしたい。
もっと芸術的なものに触れたり温泉とかに行ったりしたほうが良いのかも。
それとも海とか見にいったりするべきだろうか。
明日その時になったら都度修正して考えよう。結局この項もまとまりのない文章になってしまったな、まぁいいか。なぜなら今日から僕は自由だから。
とか書いてたら寝るの遅くなった早速やばい。